実際の例から高校化学で学んだ浸透圧のイメージを膨らませる

半透膜を介した2つの濃度が異なる溶液を用意すると、2つの溶液の濃度が一定になるように溶媒(水)が移動しようとする力を浸透圧といいます。といわれても、「だから何?」「小難しい!」となりますよね。

実は身近な様々な現象は浸透圧が関係していることが分かっています。例えば、浸透圧は私たちが飲んだ水の吸収を手伝っていたり、水に浸した千切りキャベツの触感をよりシャキシャキにしたりしています。

今回は「ナメクジと塩」「スポーツ飲料」という2つの実例に関して深く説明をしていきます。浸透圧の実例を知ることで、嫌われがちな化学を好きになってもらうと同時に身の回りの生活に活かしてもらえると幸いです!

実例

ナメクジと塩

子供の頃、遊び半分でナメクジに塩をかけて、ナメクジをしぼませていませんでした?この現象は浸透圧によってナメクジの体液が外に流出することで起きています。

ナメクジの皮膚は半透膜という水しか通れないほどの穴が空いた薄い膜に覆われており、体液中の水分が外に流出しやすいようになっています。

そのため、ナメクジは普段から体が乾燥しないようにジメジメした場所や日の当たらない夜を好んで生活しています。また、体外に水分が出ていくのを防ぐために粘液をまとっています。

ナメクジに塩をかけると塩が粘液に溶け、溶液として濃度が大きくなります。粘液が体液よりも濃度が大きくなったとき、粘液の方が浸透圧が高くなり体液中の水が流出します。

人間が体の約70%が水分であるのに対し、ナメクジは体の約90%もが水分であるため塩をかけられると致命的なダメージを受けてしまうのです。

「もしかして人もしぼむ?」と恐怖を感じた人もいると思います。人は1つ1つの細胞を区切るための細胞膜は半透膜として機能しますが、皮膚を覆った角質層が元気であれば水分が流出するのを防いでいます。

スポーツ飲料

私たちは腸で水分を吸収しているわけですが、実は腸も半透膜に覆われています。

「ナメクジと塩」の例にならうと、飲料の濃度によっては水分を体内に効率良く吸収できる可能性も逆に脱水状態になる可能性もあるわけです。では、スポーツ飲料を例に浸透圧と体の関係を見ていきましょう。

ほとんどのスポーツ飲料はアイソトニック飲料に分類されます。アイソトニックは等張液という意味で、アイソトニック飲料とは人間の安静時における体液と同じ濃度の飲料のことを指します。

運動前や風邪で寝込んでいるとき、体液に似た成分や濃度のスポーツ飲料を摂取することで体への負担が少なく糖分・塩分・水分を吸収できるというメリットがあります。

学生
学生

なるほど、ポカリやアクエリアスは等張液ということか!
う~ん、濃い飲み物だとどうなるんだろう?

先生
先生

いい着眼点ですね!
体液より濃度が高い飲み物を摂取すると浸透圧によって体液中の水が腸内に流出してしまいます

学生
学生

では、体内の水が減って脱水状態になるということですね!

逆に薄い飲み物だとどうなるんでしょうか?

先生
先生

濃度の低い飲み物だと、浸透圧によって水ばかり体内に吸収され、体液の濃度が低くなります
すると、これ以上水を飲みたいという気持ちがなくなると同時に余分な水分を尿として排出するため、これもまた脱水状態を引き起こします
ちなみにこの症状を自発的脱水症といい、運動時には注意する必要があります

学生
学生

水分補給は水を飲めばいいと思っていたのですが、水だけでは駄目だったんですね、、

先生
先生

そうだね、ただ目的によって飲料の濃度や成分を少しでも考えられるといいんじゃないかな
例えば、炭酸抜きコーラは水分摂取には向かないけれどエネルギー効率はとても良いからね!

コメント