生命が自身を食べる?分解する?生物の不思議で美しい反応のまとめ

いつもありがとうございます。

Official髭男dismの『アポトーシス』という曲をご存じでしょうか?
僕はその曲の何とも言えない切なさが好きです。
ある日ふと、アポトーシスという言葉の意味をググってみました。

いざ調べてみると、アポトーシスという反応の美しさに感動し、歌詞の意味がさらに深まりました。
そこで、アポトーシスに似た反応や現象をまとめてみることにしました。

これが、アポトーシスという曲の1番です。

訪れるべき時が来た もしその時は悲しまないでダーリン
こんな話をそろそろ しなくちゃならないほど素敵になったね

恐るるに足る将来に あんまりひどく怯えないでダーリン
そう言った私の方こそ 怖くてたまらないけど

さよならはいつしか 確実に近づく
落ち葉も空と向き合う蝉も 私達と同じ世界を同じ様に生きたの

今宵も鐘が鳴る方角は お祭りの後みたいに鎮まり返ってる
なるべく遠くへ行こうと 私達は焦る
似た者同士の街の中 空っぽ同士の胸で今
鼓動を強めて未来へとひた走る
別れの時など 目の端にも映らないように そう言い聞かすように

出典:アポトーシス / 作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

アポトーシスとネクローシス

まずはアポトーシスとネクローシスについてです。

アポトーシス(Apoptosis)とは、プログラムにより予定された細胞の死、制御された細胞の死のことです。
全ての生物には個体をより良い状態に維持するために、不必要な細胞や異常の起きた細胞が自殺するようなプログラムがDNAなどのに書き込まれています。
癌細胞が生まれたときに自ら死んでいく現象やオタマジャクシがカエルになるときに尻尾がなくなる現象、人の成長過程で指と指にある水かきがなくなる現象はアポトーシスによるものです。

一方、ネクローシス(Necrosis)とは、偶発的な細胞の死のことです。
火傷や擦り傷、薬品による肌のただれはネクローシスによるものです。
熱や栄養失調、感染、酸素不足などの受動的な要因による細胞死には炎症が伴うことが多く、
日常生活で聞く言葉として、ネクローシスは壊死えしとして知られています。

アナボリックとカタボリック

次に、アナボリックとカタボリックです。
この2つの言葉、筋トレやスポーツが好きな方は知っているかもしれません。

アナボリック(Anabolic)とは、体内で行われるたんぱく質の合成のことです。
人は肉や大豆など外部のたんぱく質をアミノ酸まで分解し、
それを常に人に合った筋たんぱく質に合成しています。
筋繊維をトレーニングで壊した後、食事でたんぱく質を補給すればアナボリックが促進され、超回復により筋肉が肥大していくわけですね。

しかし、人間の体はエネルギー源となる糖質や脂質が不足すると、自身の筋たんぱく質をアミノ酸に分解しエネルギー源として利用します。
カタボリック(Catabolic)とは、そんな体内で行われるたんぱく質の分解のことです。

食事をとり腹が満たされれば筋たんぱく質の合成(アナボリック)が進みますが、空腹が続けば筋たんぱく質の分解(カタボリック)が進みます。
つまり、人間の体は常にアナボリックとカタボリックを繰り返しているわけです。

アナボリックとカタボリックの繰り返し(イメージ)

筋肉を付けたければアナボリックを促し、カタボリックを抑制するように、食事を頻繁に取る必要があります。
だから、筋トレをしている人はバナナやプロテインバーをもぐもぐしているんですね。

オートファジー

オートファジー(Autophagy)とは、細胞内の不要な物質を分解する仕組みのことです。
Auto(自ら)+Phagy(食べる)=自食作用とも呼ばれます。
2016年に大隅良典教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことでオートファジーに注目が集まりましたね。
一見、カタボリックとオートファジーは分解という点で似ています。
しかし、そこには明確な差異があります。
カタボリックはエネルギーを生み出すためにたんぱく質を分解しますが、
オートファジーは細胞内の状態を一定に保つためにたんぱく質をはじめとした不要な物質を分解するのです。
細胞にも寿命があり、損傷を起こすこともあります。
オートファジーはそんな異常のある細胞を体内に留めないために、分解ないしエネルギーとして利用する恒常性維持システムなのです。

追記:オートリシス

まず、オートリシスはオートファジーの一種なので追記とさせていただきました。

オートリシス(Autolysis)とは、自己の酵素による細胞分解のことです。
医学用語で自己融解とも呼ばれ、酵素の中でも消化酵素によるオートリシスを特に自己消化といいます。
生物の死後であっても温度phを調整することでオートリシスが促すことが可能です。
その例として肉の熟成があります。
熟成はオートリシスによる2つの相乗効果を狙った旨味増強の調理技術です。

  1. 肉が軟らかくなる
  2. 旨味成分アミノ酸の増加

たんぱく質がアミノ酸に分解されることで繊維が崩れ肉質が軟らかく、旨味成分アミノ酸の増加も進みます。

まとめ

アポトーシスカタボリックオートファジー
対象退化予定の細胞
異常のある細胞
筋たんぱく質不要になった細胞
目的遺伝情報に基づく、本能的なものエネルギーを生成するため生体内の環境維持のため

※まとめにあたり、オートリシスはオートファジーの一種であると考えられているため省略いたしました。

人間が人間であるために体内で起こっている分解や合成の反応は美しいですね。

ぜひ以上を踏まえて『アポトーシス』聞いてみてください。

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