日本の技術力は世界標準。
車や半導体、家電製品など優れたモノで、世界のトップを走っていると。
はたして、現在、日本は世界のトップを走れているのでしょうか?
世の中に与える影響度や未来の利益を計る基準として、時価総額というものがあります。
GAFAやマイクロソフトの時価総額は100兆円規模である一方、
日本は、最高がトヨタの約20兆円で世界50位程度。
それですら、自動車販売台数がトヨタの30分の1程度であるテスラに抜かれました。
今、日本はかつての地位を失ってしまったのです。
しかし、日本はもともとの技術力は高水準。個人そして社会のポテンシャルも高い。
では、何がこの現状を引き起こしているのでしょう。
概略
まず、この言葉を知ってください。
DX(デラックスではなく、ディーエックス)
デジタルトランスフォーメーションの略。企業がビジネスの激しい変化に対応し、データやデジタルを活かして、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること
シリコンバレーではDXという言葉はあまり使われません。
なぜなら、スーパーや飲食など一見ITと関係の無い業種でも、AIや5G、データサイエンスなどを活かした経営、つまりDXが無意識に行われているからです。
今の時代シリコンバレーが世界最先端と言われる中、日本企業が最先端を目指すのであれば、DXがカギの1つなのです。
では、日本企業はDXの波に乗れているのでしょうか?
企業で見ていきます。
アメリカでは、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)
中国では、BATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)
日本では、トヨタ?パナソニック?ソフトバンク?
企業単位で見ても、日本の企業はどんどん追い抜かれていることがわかります。
ここで、日本はDXに乗り切れていない、だから遅れていると仮定しましょう。
では、なぜ日本は遅れてしまったのか?
どうやって乗るのか?
これらの疑問について、自称シリコンバレーの1流投資家である著者が向き合っていきます。
以下は本書の構成です。
- DXに関する世界の状況と日本の状況
- リテールテックとフィンテック
- デジタルの本質と活用例
- 最新テクノロジーを取り入れる方法
PoC、SaaS、b8taなど僕の知らない言葉も章末に丁寧にまとめてあり、
僕の理解を促進してくれました。
リテールテック
retail(小売)とtechnologyの造語。
小売業をAIやIOTなどの技術によって、自動化あるいは効率化する取り組みのこと。
具体的には、セルフレジや商品在庫の管理・運搬を担う「Amazon Robotics」
引用元:ASCII.jp、https://ascii.jp/elem/000/001/842/1842748/
フィンテック
finance(金融)とtechnologyの造語。
金融とITを掛け合わせた新しいサービスやソリューションのこと。
具体的には、QRコード決済などのキャッシュレス
日本の問題と解決策
コロナウィルスは全世界におけるテクノロジーの進歩をはじめの2か月で2年早めたと言われています。
オンライン教育、オンライン診療、無人店舗など、
日本でもテクノロジーの進歩を感じることができるでしょう。
一方、上手く時代の流れに乗れなかった企業は2年分の差ができ、
淘汰されてしまっているのも事実です。
パンデミックの中で流れに乗るためには、
「3密」や「こまめに手を洗うこと」に注目した経営ではなく、
テクノロジーを活用した経営が求められています。
しかし、ここでDXを進めようとするとき、日本企業の弱点があらわになってしまいます。
- ITの外注
- テクノロジーとビジネスモデルの両立
- 本業精神
- 個人情報などの規制
- 経営層のデジタル領域に関する知識不足
- 伝統という足枷 etc.
テクノロジーとビジネスモデルの両立
教育機関
大学などの教育機関と企業が結びつき、協力してテクノロジーとビジネスを成立させる産学連携という仕組みを知っていますか?
日本では、研究機関と企業が癒着するのを恐れ、
お金儲けの研究はよろしくないという風潮がテクノロジーの発展を妨げているといいます。
もちろん、知的好奇心に任せた研究が悪いと言っているわけではありません。
この例を見てください。
アメリカのヒューレット・パッカード(コンピュータ、電子計測機器領域)
という大企業の話です。
ヒューレット・パッカードの創業者であるビル・ヒューレットとデビッド・パッカードは、スタンフォード大学の恩師であるフレデリック・ターマン教授の支援を受けて起業を決意します。
2人の起業は成功し、スタンフォード大学はヒューレット・パッカードの寄付金でさらに発展することとなります。
スタンフォード大学の地位は出資とその出資が返ってくる積み重ねで築かれたものです。
日本の研究機関ではどうでしょう、
ヒューレット・パッカードの例ほど、研究機関と企業が協力しているのでしょうか?
研究を行うにはお金が必要。
しかし、予算も少なく、任期も存在する。
結果が出れば、予算が出るので結果を求める、競争が起こる。
利益の見込める研究のみ行われる。
国立理系学生の僕から見ても、日本における研究の仕組みは疑問に感じることがあります。
自由な研究をする→研究をビジネスに結びつける→ビジネスモデルが確立+お金の発生
日本では研究をビジネスにという流れを作り出すのが弱い。
(お、〇〇大学のこの研究、〇〇と組み合わせると利益が出るのでは?)
我々のビジネスに協力していただけないか?
なるほど、
それは面白い。では、協力しましょう!
QRコード
もともと、QRコードはデンソーという日本企業が、製造業の効率化のために生み出されました。
しかし、うまく利益に結び付けることができず、中国のQRコード決済にうまく利用されてしまいました。
最近ではPayPayなど、日本でもキャッシュレス決済が浸透してきています。
しかし、中国のAlipay(Alibaba)やWeChat Pay(Tencent)ほどの普及率はありません。
かつての日本は、QRコードという技術はあるのにもかかわらず、
それをビジネスに応用できませんでした。
ハイパーループ
これは次世代型超高速輸送システムで、ハイパーループと呼ばれています。
2013年にイーロン・マスクによって発表されました。
仕組みは、ほぼ真空に近いチューブ内で、空中浮遊した列車を走行させるというものです。
それにより、摩擦抵抗や空気抵抗を最小限に抑え、時速1000キロを超える速さで移動を可能とします。
現段階でハイパーループは、仮想の乗り物です。
しかし、アメリカ、イギリス、韓国では、ハイパーループの研究開発が進められ、現実となり始めています。
日本はというと、すでにリニアモーターの敷設に予算を使い、ハイパーループがリニアの2倍ほどの速度で走行できると分かっていても、ハイパーループの研究開発に舵を切れていません。
ビジネスモデルはあるのに、テクノロジーがなく、予算もない。
国がダメなら、企業が積極的に関わる必要があり、現状、日本は後手に回っていると言えるでしょう。
様々な業界にアンテナを立て、テクノロジーを取り入れる姿勢が大切だと言います。
経営層のデジタル領域に関する知識不足
日本の大企業の多くは、製造業出身であり、年功序列、終身雇用であるため、経営層があまりデジタルを理解していない。
ここで何かしらの勝負をするとしましょう。
出世を遂げたシニア層 VS 上を見て成長を続ける若者層
かなりの確率で、体力的にも、年齢的にも、アグレッシブな若者に軍配が上がるでしょう。
つまり、「シニア層いらない」「若者に経営をやらせろ」ということでしょうか?
いいえ。
どうにかしなければならないのは、日本企業の文化です。
利益を出すことを重視した結果、
すでに、トヨタは自動車販売台数が30分の1程度のテスラに企業価値で負けたのです。
- 長く続く会社が良い会社
- 利益重視
- 自社開発
- 年功序列、終身雇用
企業が新しい文化を取り入れやすい環境を作ることが大切だと言います。
そして、環境を作るのはやはり経営層(シニア層)です。
方法の1つに、役員など経営の近いポジションに、デジタル知識のある人間を配置するものがあります。
例えば、スタートアップを買収し、スタートアップのトップに役員をしてもらう。
このように、M&AやCVCの文化を取り入れていく。
そして、企業内でデジタルの知識が増え、新しいアイデアで潤う。
結果、DXが進む。
日本企業がどこまで、デジタル領域の知識を蓄えることができるかは、経営層の腕にかかっています。
シリコンバレーまで足を運ぶもよし、スタートアップを買収するもよし、社内環境を整えるもよし。
それができなければ、日本企業はデジタルの波に乗ることができず、地位を失っていく一方です。
変化
ビジネス知識の増加
本書は、テーマ(DXにおくれた日本)として難易度が高いでしょう。
しかし、読み終わり記事を書き終わるころには、
ビジネス用語や世界の大まかな情勢を知ることができました。
危機意識と今後の動き
僕は日本という小さな社会の中でしか、ものを見れていないことに気づきました。
どうしても、日本の中だけでは情報に偏りが生まれてしまう。
そして、その偏りに違和感を感じることなく、日常生活を送ってしまう。
これは日本の島国という風土上仕方ないのかもしれません。
情報の偏りは、誰にでもあると思います。
しかし、できるだけ減らした方が良いのも事実でしょう。
そこで、偏りを減らすために僕が自分でできる方法を2つ程度考えました。
- 人と話す
- まずやる
僕の性格上どうしても、自分1人の世界を構築しがちなので、
積極的に人と話すことで情報をインプットを意識しようと考えています。
オンラインで大学生活を送っていて、思うことが1つあります。
親はリモートワークで朝から夜まで椅子に座って仕事をしているのに対し、
僕は大学のオンデマンド授業を3~4時間で終わらせた後、フリーな時間がかなりあること。
その時間を好きにできることは学生の特権でしょう。
そして、僕は空き時間があるのは、学生がチャレンジをするためだと考えています。
なので、自分が興味がなくても、まずやってみる。
そうやって、未知の領域に積極的に関わっていく習慣をつけたいと考えています。
本書を通じて、僕の中に危機感が生まれ、生活の仕方や考え方を改めるきっかけになりました。
まとめ
まず、今回の書評は重い内容になってしまい、失礼しました。
現状、日本企業はかつての地位を失っています。
しかし、日本でも流れが変わり、
ITや海外のテクノロジーを導入できる企業が増えているのも事実です。
トヨタは、約2000人が暮らす街の中で完全自動運転、AIによる健康管理、脱炭素化など、様々な実証を行う、Woven Cityというプロジェクトを始動しました。
他にも、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)を設置したり、
10年計画でなく来年にはと、スピード感のある経営を意識している企業もあるようです。
今回の記事を通じて、少しでも僕の様な学生やデジタルに疎い方が危機感を持ち、
意識改革をするきっかけになればいいと考えています。
著者紹介
著者、山本康正さんは東京大学大学院で修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。
そして、ハーバード大学大学院で理学博士号を取得。
修士課程修了後に米グーグルに入社。
DNX Ventures インダストリーパートナー、ハーバード大学客員研究員、
京都大学大学院総合生存学館特任准教授として活動。
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