最初に僕が世界史を学んだのは、高校1年生のとき。
結局、理系に進んでしまったので勉強を真剣にすることはありませんでした。
しかし、社会科目が好きだったのでどこか後悔をしていました。
そして、大学入学後、歴史書のコーナーでパラパラと本を見ているとき、見つけた本がこれです。
「世界史をヨコで読む?」
パラパラ、、、
わかりやすい!
即決で買うことにしました。
高校時代の友達に聞いてみたところ、受験のときに参考にしていたとのこと。
参考までに、受験で本格的に用いられる参考書と比較してみました。
理系の僕でも興味をそそられ、わかりやく説明がなされていた、ということが伝わればうれしいです。
一般的な参考書 | ヨコで読む世界史 | |
網羅性 | 高い | 低い |
読む気力 | おきない | おきる |
わかりやすさ | わかりにくい | わかりやすい |
完読までの時間 | 3時間以上 | 約3時間 |
概略
著者の斎藤整先生(世界史の超有名講師)は以下のように言っています。
本書は
ヨコで読む大人の世界史 p3
「今起きていることは、かつて世界で、しかも同時に起きていた」という点に着目し、
「世界の歴史を、つながり=ヨコで見てみる」というコンセプトのもと、
まとめられました。
紀元前3000年ごろから21世紀までの世界史が全18講に分けられています。
こちらが全18講です。
- 四大文明の幕開け
- 技術革新と宗教誕生
- インフラの整備と法の成立
- 流通ネットワークの誕生
- 流通ネットワークの終焉
- 気候変動が生んだ遊牧騎馬民族の時代
- 「中国の源氏」の時代
- 世界ネットワークと移民国家日本の誕生
- 世紀末と世界交易の衰退
- 東西で起きたマネー革命
- 情報国家モンゴルの誕生
- 環境破壊とペスト大流行
- 3つの大航海時代
- 世界を席巻した日本銀
- 異常気象と人類の試練
- 海賊の時代
- 情報の時代
- 地球環境と日本の「和」
それぞれの講に1つ程度の深堀コーナーが存在します。
深堀コーナーでは、
オシッコ税という小学生が好きそうな税や、
日本有数の霊場の1つ恐山に存在する金鉱(国定公園かつ高濃度のヒ素と硫化水素による危険度の高さのため今も手つかず)
など興味をそそられる内容が数多くあります。
世界をヨコで読むとは
現在は、情報ネットワークも発達し、ブラジルで起きたことはすぐに日本で知ることができます。
世界は1つになったと言い切ってもいいのかもしれません。
ある時点において、世界をヨコに見ることによって得られる考えや行動の相関を考える。
僕はこれが、本書の「ヨコで読む」だと解釈しました。
では、情報の伝わりが遅い時代に、大陸、国、村ごとに独立した文化を築いていたのでしょうか?
孝文帝とクローヴィス
5世紀後半、中国北部を統一した北魏を率いたのは孝文帝、
後のドイツ、フランス、イタリアの起源となるフランク王国を発展させたのはクローヴィスであった。
不思議なことに、北魏とフランク王国はかなり似ていることがわかっています。
具体的に比較して、見てみましょう。
北魏はモンゴル系(トルコ系説もあり)の鮮卑人が立てた王朝で、9割以上が漢民族であることがわかっています。
ここですごいのはこのやり取りができることです。(細かいところは無視してください)
今日から君らを引っ張っていくことになった、孝文帝というものだ。
ははー!!
孝文帝様、何なりとお申し付けください!
いや、よい。
まず、首都を君ら中国文化の中心地である洛陽に移そう。
そんな、
孝文帝様のホームグラウンドでなくてよいのですか?
よいよい。
衣服も鮮卑服でなく、中国風の服にしよう。
あと、わしらの言語(鮮卑語)を禁止して、
29歳以下は中国語しかしゃべってはならないことにしよう。
そして、漢民族はどんどん官僚になるように!
ええ!
そんな、私たちは支配される身だというのに、、
このように、孝文帝は積極的に融和政策をとったのです。
フランク王国でも同様、支配階級のゲルマン人は少数で、9割以上がローマ(ラテン)人であることがわかっています。
クローヴィスも先進文明のローマを徹底的にまねました。
宗教に関しても、ローマ人が信仰するアタナシウス派のキリスト教(ローマ=カトリック)に改宗。
ローマ人との通婚を奨励。
クローヴィスも孝文帝と同様に、融和政策をとったのです。
興味深いのは、孝文帝とクローヴィスの生年差がたった2歳しかないことで、
彼らは空間を超えてほぼ同時期に同様の政策をとり、新しい中国と西欧を生み出すことに成功したのです。
孝文帝(鮮卑人) | クローヴィス(ゲルマン人) | |
国 | 北魏 | フランク王国 |
生没年 | 467~499年 | 465~511年 |
人口分布 | 9割以上が漢民族 支配階級の鮮卑人は少数派 | 9割以上がローマ(ラテン)人 支配階級のゲルマン人は少数派 |
融和政策 | 都を北方の平城(大同)から洛陽に 漢民族を積極的に官僚に 中国風の衣服に変更 29歳以下は中国語の使用 | ローマ人とゲルマン人の通婚を奨励 ローマ人を積極的に官僚に キリスト教(ローマ=カトリック)に改宗 公用語をラテン語に |
皆さんは、このヨコのつながりに何を感じますか?
孝文帝とクローヴィスはお互いにLINEで連絡でも取っていたのでしょうか。
変化
歴史の意義を再考
概略にて、
「今世界で起きていることは過去に起きていた」という言葉の深さに対して、自分なりの解釈が進み、
歴史を学ぶ意義について考える機会となりました。
孝文帝とクローヴィスは、
時代背景として、中国でも西欧でも多くの国が多文化を押さえつける方針で失敗する中で、
逆に相手に合わせるという方針をとれるほど、柔軟性が高かったため、栄華を極められたと推測します。
そのうち、10年後の未来人が今を歴史として振り返ることになります。
そのとき、世界をヨコに見ると、コロナ渦で業績を上げた企業は、AIやデータサイエンスを積極的に利用し、DXを進めていたことがわかったりするのかもしれません。
DXって何という方はこちらを、
このようなことから、今を生き残るためには、過去からの学びが重要で、
歴史を学ぶ本質は、過去に起きたことを今に活かすことにある、と考えます。
僕なりの解釈なので、別の考えがあったら教えてください。
世界史知識の増加
本書では、世界史の流れを学ぶことができました。
もちろん、受験などで扱うほどの深い知識は手に入りませんでした。
しかし、世界史にまつわる会話に積極的に参加できるようになりました。
世界史の流れをザックリ学ぶのには、非常に良い1冊であったと考えます。
世界史を学んでいないに等しい僕が言うので間違いないです。
著者紹介
著者、斎藤整先生は、学研プライムゼミの特任講師で、慶応義塾大学史学科でイスラーム史と比較文化を学んだ後、駿台予備校や東進ハイスクールなどで教鞭をとってきた超有名講師。主に世界史を担当し、主な著書に「タテから見る世界史」「ヨコから見る世界史」(いずれも学研プラス)などがある。
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