カビ(貴腐菌)でぶどうの糖度を上げて造る貴腐ワインとは?

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辛口ワイン甘口ワイン、あなたは製造法の違いを説明できますか?

辛口ワインは、ぶどうに含まれるほとんどのブドウ糖をアルコール発酵させることで造られます。そのため、甘さ控えめアルコール度数高めなワインとなる傾向があります。

甘口ワインは、アルコール発酵を抑えることで造られます。そのため、アルコール度数低め甘めなワインとなる傾向があります。

そして、今回扱うのは極甘口ワインとも呼ばれる「貴腐ワイン」です。

貴腐ワインとは

貴腐ワインとは、
貴腐菌と呼ばれる特殊な微生物の作用で糖度が高くなったぶどうを用いて造られるワインのことです。

凝縮感のある強い甘みと独特の香りが特徴で、特殊な気候条件で栽培される貴腐ぶどうの希少性と高貴な風味から、最高級の甘口ワインという立ち位置にいます。

また、食前や食後にデザートと共に、あるいはデザートの代わりに飲まれることが多く、
デザートワインの1つとしても有名です。

デザートワイン:
デザートワインの定義は国により異なる。
一般的には辛口ではなく甘口ワインのことを指し、高い糖度とアルコール度数を求められる。
主に「貴腐ワイン」「アイスワイン」「干しブドウワイン」「遅摘みワイン」 の4種類がデザートワインで、それぞれで果汁自体の糖度を上げたり、アルコール発酵を途中で止めるなど、
甘さを出すために工夫されている。

貴腐ワインの産地として次の3つが有名です。

  • ソーテルヌ(フランス)
  • トカイ(ハンガリー)
  • トロッケンベーレンアウスレーゼ(ドイツ)

そして、以上の産地でできた貴腐ワインは世界三大貴腐ワインと呼ばれ人気を得ています。

貴腐菌(botrytis cinerea)とは

Botrytis cinerea

学名、ボトリティス・シネレアは、特殊なカビの一種です。

主に温帯地域で発生し、200種類以上の野菜や果物に灰色かび病など多くの病気を引き起こします。

トマトやキュウリ、イチゴなど主要な作物を宿主とし、農業上の被害が大きいことから、
この菌のメカニズムを解明するための努力がなされています。

また、多犯性の本菌から作物を守るために農薬などの化学的なアプローチがされており、
世界中の農家さんを困らせているようです。

貴腐ワインができるまでのメカニズム

環境の条件

大前提として、
貴腐菌( ボトリティス・シネレア )は有害です。

そのため、普通に貴腐菌を繁殖させると灰色かび病を発生させ、
ぶどうを腐敗させてしまいます。

しかし、
昼は乾燥し夜は湿度が高いような環境下では、
ぶどうを腐敗させずに育てられます。
そうして、適度に貴腐菌を繁殖させたぶどうが貴腐ぶどうです。

フランスのソーテルヌ地区は、
日中は温暖で乾燥していて、夕方から朝にかけて霧が発生するため、
上質な貴腐ぶどうの生育に適した環境といえます。

また、基本的に貴腐ぶどうは自然と貴腐菌がついたぶどうのことを指し、
環境条件などにより貴腐菌がつかなかった年には貴腐ワインを造らず、
辛口ワインとして生産することもあります。

糖度が高い理由

デザートワインを造るためには、高い糖度とアルコール度数が求められることは前述しました。

では、ワインの糖度を上げる方法は?

  • 果物の糖度を上げる
  • 糖分を加える
  • アルコール発酵を途中で止める
  • 脱水する

主にこの4つが挙げられます。
そして、貴腐ワインでは以下のように脱水して、糖度を上げています。

  1. 貴腐菌が果皮を溶かす
  2. 果実の水分が蒸発する
  3. 糖や旨味の濃度が上がる

さらに、貴腐菌が糖や酸を分解することで独特の風味が生まれ、
甘さ以外にも貴腐ワインとしての独自性を生み出しています。

まとめ

貴腐ワインは貴腐菌の作用で以下の特徴を持ちます。

  • ぶどうの水分が抜け、甘さがうまれる
  • 独特な香りがうまれる

これらの特徴がワイン業界内での差異を生み、
貴腐ワインとしてのブランドを確立する要素となっています。

一方で、貴腐ワインを造るのは苦労を要します。

  • 特殊な気候条件が満たされるのは一部の地域のみ
  • 毎年その条件が満たされることは保証されていない
  • 果皮についた貴腐菌を取り除くために収穫は手摘み
  • 脱水されたぶどうから取れる果汁は通常のものより遥かに少ない etc.

以上のように、
手間がかかり、希少性が高い、そして上品な味、風味を備えた貴腐ワインは、
最高級の甘口ワインという立場を確立しています。

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