約70%が水でできた私たちの体は常に水分を汗や尿として排出しています。しかし、水分を摂取する方法は飲料を口から摂取するだけです。
私たちの体のほとんどが水でできているのなら、水分の取り方を少し気に掛けるだけでより体への負荷も減り、より健康な体を作ることができるのではないでしょうか?
方法の1つとして、浸透圧という力を利用することができればより水分の摂取効率を上げることができます。そんな浸透圧の仕組みや原理を深堀して、文系の方にも分かりやすいように説明します。
半透膜
浸透圧を説明する上で外せないのが半透膜という膜で、動物の膀胱膜や卵の殻の内側にある卵殻膜、細胞を囲む細胞膜は半透膜の1種であることが知られています。
半透膜とはある一定の大きさ以下の粒子(一部の分子またはイオン)だけが通過できるほどの穴が空いた膜のことを指します。一般に水(H2O)は半透膜を通過できても砂糖(C12H22O11)や塩(NaCl)は通過できません。
半透膜が重要なのは大きさによって通れる粒子と通れない粒子がいるという点です。
ちなみに、ろ紙やコーヒーフィルターは全ての分子が通過可能(全透性)であり全透膜に当てはまります。
浸透圧
では、本題です。濃度の異なる2つの液体が半透膜を介したとき、濃度の小さい方に溶媒が移動しようとする力あるいは、半透膜を介した2つの溶液が濃度が同じになるように溶媒が移動しようとする力を浸透圧といいます。
※厳密には移動しようとする力を圧力に変換したもの
半透膜を挟んだ水があるとき、右に塩を入れると塩の粒子は半透膜を通過できないので右側の濃度を小さくするために水分子が左から右に移動します。
すると、右側の水面が上昇しますが、無限に上昇し続けるわけではなく、上昇しようとする力と移動した水分子の重さによる下降しようとする力が釣り合い水面上昇が止まります。こうして、膜を挟んでいるはずの液体が移動し高さが変わるという不思議な光景を観察できます。
肝心の浸透圧とは、水面差を無くすために加える力(図ではおもりに起因する)のことです。おもりの重さによる測定できる力と水が移動しようとする測定できない力(浸透圧)が釣り合っている(等しい)ので、浸透圧が求められるという仕組みです。
高校化学にレベルを上げて解説を行うと、ファントホッフの法則より気体定数と温度は一定であるとすると浸透圧は変数であるモル濃度で決まるため、浸透圧πはモル濃度Cに依存した力であることが分かります。
なぜ、濃度の低い方から濃度の高い方へ?
では、この食塩水の例にならって、なぜ濃度の低い方から濃度の高い方へ溶媒(水)が移動しようとするのかを説明します。
半透膜は膜の穴より小さな物質(水)は膜を通過できるが穴より大きな物質(砂糖、塩など)は膜を通過できないという性質がありました。また、膜の穴には右からも左からも常に同じ量の分子がやり取りされています。
この2点と以下の図を用いて説明します。
図は左からも右からも等量の矢印があり、これは同じ量の分子が交換されていることを意味します。しかし、赤の分子(Na+,Cl–,NaCl)が穴に詰まることで右から左には力は働くものの実際に青の分子(H2O)の移動はせず、右に向く矢印が多くなります。
結果、右にばかりに青の分子が移動し、右の溶液が薄くなります。これが濃度の低い方から高い方へ濃度が一定になるように水が移動する理由です。
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